by 千津子 はしもと(投稿日:xx xx 1992)

日程:1992/8/8(土)〜8/16(日)
参加:G(計画)、M(計画)、橋本
コース概要:=白浜−龍神温泉−五條−東吉野−和佐又山−十津川−紀宝町=

Map, Click to Popup  和歌山、奈良、三重県をまたにかけ紀伊半島をめぐる9日間の自転車旅行。お盆の時期というのに前日の晩まで宿が確定できず、コース変更の嵐の中やっと出発にこぎ付けた。


1日目:8/8(土) 東京=白浜
 *始まりは砂の嵐*

 例のごとくゴキさんはぎりぎりだ。この時期当然混んでいる新幹線の改札をズルズルと抜け、ひかり203号に乗り込む。新大阪で乗り換え、白浜駅には13:00頃ついた。駅の職員は皆魚貝模様の青いアロハシャツを着ている。流石は関西!
 さて天気の方は台風が近いのにたいした雨も降っておらず走るに支障はない。自転車を組み立て食事をした後、南方熊楠記念館へ向かった。海岸沿いは横風が強く飛ばされそうだ。舞い上がる砂が顔に叩き付けられる。そのような強風の中ではあったが、ゴキさんのパンク、Mさんの静止からの仰向け転倒以外事故もなく到着。熊楠とはエライ人物である。あんなに頭がよかったら世の中面白いだろうなあなどと思いつつ記念館を後にした。そこから円月島をバックに写真など撮りながら宿に向かった。
 民宿すしひでは浜から遠いが、おいしそうである。すしはでなかったがかつをのさしみはおいしかった。
 走行距離(時間):18km(2.6h)


2日目:8/9(日) 白浜−虎ヶ峰峠−龍神温泉
 *美人の湯である*

 朝、傘、水着などを最後の宿へ宅急便で送る。田辺市で国道からそれ、虎ヶ峰峠へと向かう。途中にはキゼツ峡なるものがあって、気絶するくらいすごいのかと思ったが、奇絶。道路からすぐの滝しか見なかったが、木々の間からこぼれる光が一筋水面に反射してきれい。登る道、Mさんは寝過ぎて調子が悪い様子。峠で休息したあと龍神村まで下る。村へは入ってから温泉へはまだかなりあった。
 民宿切林は温泉街の外れにあり、露店風呂がある。男湯は植木で外からあまり見えないのだが、女湯はなんだか植木が少ない。龍神温泉は日本三大美人の湯の一つだそうだ。使用前、使用後で写真を撮ればよかったネ。
 この晩お土産屋までひとっぱしり。Mさんの買った”ゆべし”を少しもらった。これは柚の皮の中にしょっぱい味噌がつまっているもの。あまりおいしくなく、ガッカリ…。
 走行距離(時間):55km(5.7h)


3日目:8/10(月) 龍神温泉−高野山−五條
 *高野の曼陀羅*

 龍神温泉から高野山スカイラインに入る。暑さもありきつい。そのうち、なだらかに見える坂でも脚が回らなくなってきた。途中、側溝に自転車を置き、日陰にしゃがみ込んで休むと眠くなる。でもカメが眠っていたらお話にならないのだ。少し走ると恋小袖の滝というのがありMさんとゴキさんがいた。冷たくておいしい水だ。頭にもかける。(道バタで頭から水をかぶるなど生まれて初めてである。)
 そこから護摩壇山のゴマサンタワーへ向かう。山の涼風と照り返しの熱風が混ざって吹き付ける。下る車のタイヤの焼ける臭いが時折鼻をつく。ゴマサンタワーは山名に因んでか、護摩木を組んだような展望タワーだ。下の食堂で昼食。Ice Coffeが胃にしみる。タワーを出て少し上ると下り傾向。紫陽花、石楠花園で一休み。8月というのに紫陽花が山の斜面にきれいに咲いていた。
 スカイラインが終わりR371に出るとすぐ高野山金剛峯寺がある。寺内を見て回るとお茶とお供物菓子をいただいた。両界曼陀羅の前で心安らぐ一時を過ごしてしまった。根本大塔を見たりして高野山を後にする。R371を北上。川沿いの道は狭くあまり整備されていないが、面白コワイ下り。いいぞーと思いきや、この後けっこう上り。ここで上りは終わりであろうとゴキさんが予想した地点から上る上る。空も雲って涼しくなった頃、やっと下りにはいる。山の上から一気に下ると気温差を肌で感じる。こういう感覚は自転車ならではと思う。だんだん風が生温くなり、すっかりむし暑くなった頃、大和街道に入る。車が多くてアップダウンがつらい。
 五條の裏道にある藤井館は広く、部屋もお風呂もきれいだった。夜はタケシを見ながらストレッチ&マッサージ。Mさんの弱点発見!
 走行距離(時間):84km(10.3h)


4日目:8/11(火) 五條−飛鳥−東吉野
 *晴れ女、一巻の終わり*

 暑い。五條からおおよそJRに沿い、のんびりした道を走りR169に出る。茶店でお茶してしまう。それから甘樫の丘へ。あづい。暑くて古代のロマンに思いを駆せる余裕などない。やっとの思いで丘に登る。小山のような古墳が点在する。掘ったら何か出てくるだろうか。丘をおり飛鳥坐(アスカニイマス)神社へ。静かな今にも壊れそうな土俗的な古社である。ここには、男は左手、女は右手だけで持ち上げられたら良いことがあるという石があった。Mさんもゴキさんも上げられたが私は上げられなかった。ガッカリ…。

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甘樫の丘にて。暑さのためボーッとしているMと橋本。(G撮影)

 飛鳥寺で大仏様を拝み、蘇我入鹿の首塚をちらりと見てスイカを食べた。さて、漢字と歴史に弱いゴキさんとはしもとはMさんの文学、歴史に造詣が深いのに感心した飛鳥観光であった。季節がら石舞台の周りにはヒガンバナが咲いていた。石舞台の石は大きい。すごいが、どうせやるならもうちょっと石の形を整えても良いのではないかと思ったりもする。以前から、その名のせいか、月夜にこの大石の上で踊ってみたいと思った。りするのは私だけだろうか。
 これからは宿に向かうのみ。先ず吉野町へ。しばらく上り。はじめてMさんを追い越す。どこから来てどこへ向かうのか、ゆかた姿の原チャリが数台バラバラと下っていった。だんだん雲行きが怪しくなり、パラパラと降りだした。芋ヶ峠についたときには、ちょっと雨宿りしたいな、くらい。峠から下って民家が現われだしたころには本格的に雷雨。(ハレ女もここまでか…)ひとんちの車庫で雨宿り。しばらく待っていたが、ますますひどくなる。道はそれこそ川のよう。呆れるばかりの大雨。
 一時間近くも待っただろうか、やっと走れるぐらいになったので先を急ぐ。途中店で道を聞いたりして、やっとR166に出た。そのころには雨は上がっていたが、暗くなり始めていた。広い道のだらだら上りが続き、その向こうに明かりのついたトンネルと宿の看板が見える。木津トンネルを抜けてガススタンドで道を聞く。左の坂道に入れと言う。もう真っ暗。行けども行けども何も見えず、暗い山に吸い込まれるばかり。やっと明かりを見た時は7時を回っていた。
 民宿いどや。取っておいてもらった夕食を、宿の姉妹の漫才を聞きながら食べた。なんて長い一日。
 走行距離(時間):67km(10.6h)


5日目:8/12(水) 東吉野−伯母峰峠−和佐又山
 *またまた和佐又山へ吸い込まれる*

 宿を出て山を下る。食料を買い込み吉野川沿いの国道、東熊野街道に出る。今日もなかなか暑い。バス停で、さっき買ったオレンジを食べる。おいしー。少し行くと不動窟なるものがあった。入らなかったが、そこのお土産屋でお昼にした。ここからさらに5km程南下すると大台ヶ原ドライブウエイの入り口がある。先ず伯母峰峠へ。休んだ後、先に行けるところまで行くことにした。が、そのうち霧が濃くなり、時間もないので引き返すことにした。大台ヶ原は、日本一の降水量だそうだ。
 後は下って宿へ向かうだけである。再び東熊野街道に出、2km程もある伯母峰トンネルを抜けると、和佐又山へ入る道がある。入り口はやけにきつい坂だったが、そのあとも…。いくら行っても、ますますきつくなり、蛇行しても踏み切れない。早々に諦めて押しに入るが、もうほとんど路面しか目に入らないゼッペキ。そのうち霧も濃くなり辺りは薄暗くなってきた。ゴキさんは先に行ってしまい、Mさんも見えなくなり、低い鳥の声が山に響いて不安になる。
 そのうち止っているMさんに追い付き、一緒に押す。一時間近く上り続けた。するとゴキさんが歩いて下ってきた。ああ、もうすぐなんだ。ゴキさんに、苦しいときに苦しい顔をするとよけい苦しいよと、はげまされた(?)が、何のリアクションもできず申し訳ないと思いながら無言で押し、やっと和佐又ヒュッテが現われた。
 走行距離(時間):63km(8.6h)


6日目:8/13(木) 和佐又山−天川村−十津川
 *師匠、5000円を拾う*

 和佐又山の朝は雨だった。山を下りR425に出たところでゴキさんは神社で雨宿りして待っていた。少し南下して国道をそれ、天川方面へ向かう。2km程の行者還トンネルを抜けさらに行くと、一旦R309に入りまた国道をそれ、天ノ川沿いに走る。だらだらしたアップダウンで、それが気に入らないそうでゴキさんの声は低い。小さな釣り人相手の店でお昼。
 R168に出て十津川方面に南下する。谷瀬の吊橋が見える茶店で一休み。外へ出たときゴキさんが5000円を拾った。(これは後にコーヒーや氷となって私達に還元された。)吊橋はもっとひなびた所かと思ったが、すっかり観光地である。吊橋を渡るのは、こりゃあ久々ヒットのキョーフであった。揺れるし、手をかける所がないし、怖くて後ろも振り返れない。やっと渡り終えて振り返るとMさんがニコニコしながらスタスタと渡ってきた。
 吊橋からさらに7kmほど南下し国道を離れ静かな神納川沿いに8kmほど入る。本日の宿:民宿たま屋は五百瀬という所にある。宿には三つになるゆいちゃんという女の子がいた。彼女はサカナやカエルがいる川で泳ぐそうだ。私の家の近くには荒川や綾瀬川があるが川で泳いだことなどナイ。
 走行距離(時間):89km(8.6h)


7日目:8/14(金) 十津川−本宮−紀宝町
 *熊野神社詣*

 再びR168へ。十津川沿いを南下する。川の白い石が水の色をそのまま映し、川の色は水切放しのスライドグラスのよう。川幅は広く、ゆうゆうと流れる。川原におりて、三人でボーっとする。水遊びをしている人達、気持ち良さそう。下流に行くほど水の色は濃くなりビー玉色になる。道は下り傾向できつくはないが何となくこげない。十津川温泉のあたりで一休み。ゴキさんは”めはりずし”を買ったが、何か白いフワフワしたものが…。それ以来ゴキさんは白いムラには敏感である。
 本宮町に至り熊野本宮神社に参拝。極楽浄土の近道として、平安時代から信仰を集めている熊野三山の一つである。参拝の後、脇道にはいると熊野古道の一部があり、そこから降りることが出来る。近くで昼食をとり、R168をヒタ走り、新宮市へ。熊野三山の二つ目、熊野速玉神社は、本宮と造りは似ているが、本宮が木肌そのままなのに対し、洙塗の鮮やかな社である。
 そこから北上し三重県の紀宝町の宿へ。本日の宿:民宿はまゆう。長かったわりに明るいうちについた。荷物を置いて、浜へ散歩に行った。エライ波だ。近くの製紙工場のせいか少し臭い、泡立つ波が薄茶色い。小石の広がる浜でしばらくボーッとする。白やら黒やら、きれいな石を拾って帰った。
 走行距離(時間):95km(8.6h)


8日目:8/15(土) 紀宝町−那智山−赤石海岸=大阪 
 *いざ海水浴*

 宿を出ると先ず近くの薬局で、水着と一泊分を残し荷物を送る。R42を南下。アップダウンが疲れる。那智から那智山を目指す。気分は悪くないが登れない。尻上がりに好調のMさんはすっかり見えなくなっていた。さてまず着いたのは那智滝である。高さ133m滝そのものがご神体だそうだ。このあと三山の残る一つ、熊野那智神社へ。スカイラインは自転車では入れないそうで、(料金所でMさんは、今回二度目の転倒)、参道を歩いて登る。境内は広く、熊野神社のいくつかの社と、青願渡寺がある。ここからの眺めは良く山側には先程の滝が見える。
 那智山を下り、昼食をとって、那智駅の前に広がる海水浴場へ。海だ、海だ!天気は良いし、海日和。大きな浮輪とゴザを借りて子供のように遊ぶ。
 そして思い残すことなく電車で大阪へ向かう。本日の宿:ビジネスホテルつじ井。コンビニで買ったジュースなど飲みながらテレビを見ていると、もう終わってしまったなあと、少し淋しくなった。
 走行距離(時間):37km(3.8h)


9日目:8/16(日) 大阪=東京
 *おわりは空の上*

 早朝に大阪空港からJALで羽田へ。


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