'95 GW_伊豆諸島RUN 〜 温泉、キャンプ天国 〜

by Mr.& Mrs.吉岡(投稿日:5 Sep 1995)

日程:1995/4/30(日)〜5/7(日)
参加:吉岡夫妻(玲子&謙二)
コース概要:=神津島ー式根島ー新島ー大島=

Map, Click to Popup  今年のゴールデンウィークのテーマは「テント持って走ろう」ということで、謙二のALPSのキャンピング車ローバー(2年前のOBラン以来クニトさん宅で冬眠していた)を返してもらった。玲子の愛車ALPSクライマーと共に、整備を謙二が担当する。ローバーは2年前とほとんど変わらない状態で全然整備の必要がなかった。邦人さん、直美さんありがとうございます。
 行き先は、南の島にしようということで、小笠原、伊豆諸島とまよった。少し前に読んだ本『B級グルメのたのしい温泉(文芸春秋編)』の中の、式根島の地なた温泉(大地をなたで割ったようなV字谷の底を通ってたどりつくおどろおどろしい海中温泉)や新島の「何故か古代ギリシャの神殿の廃虚が温泉になっている不思議な展望温泉」に引かれて、キャンプ場がありそうな伊豆諸島に決定した。(ちなみに小笠原は全島キャンプ禁止。なぜだ!!)


前日:東海汽船の旅  4/30(日) 30 km(Mr. 吉岡のみ)
 玲子は3日前から福岡出張のため、当日の飛行機で羽田空港に戻って、夕方柏に着く。謙二の方は自転車の整備や部屋の掃除、久々の両サイドのパッキングに手間取り、PM6:00前にやっと竹芝桟橋に向けて自転車でスタート。柏から江戸川ぞいのサイクリングロード、荒川ぞいの土手道を南下し、木場から勝鬨橋を渡って竹芝桟橋まで約3時間。夕暮れの土手道を走るのはノスタルジックな気分に浸れて、なかなか風情がある。幹線道路を避ければ都内は以外と走りやすかった。
 その後玲子はお弁当作って、パッキングして(フロントとザック)輪行袋担いでタクシーをひろい、別々の出発となる。竹芝桟橋で待ち合わせをし、PM10:00出航のさるびあ2(大型客船)になんとか乗り込む。輪行袋はタダだけど、裸の自転車は1600円もとられ(1時間前に手荷物であずければ880円)、謙二はせっかく走って来たのにちょっとくやしい。
 デッキでお酒を飲みつつライトアップされたレインボーブリッジをくぐって、ちょっとリッチに一等席(和室10人部屋、布団付き)でゆっくり寝た。さすがGWで、多くの人たちがデッキや通路にあふれて貸し毛布にくるまっていた。


1日目:神津島  5/1(月) 20 km未満
 朝5時過ぎから、船は大島−利島−新島−式根島−神津島 の順に止まる、私達は神津から順に東京に戻るようにまわることにする。神津島は伊豆七島のほぼ真ん中に位置し、周囲22kmの島で、天上山がそびえ、崖が切り立ち、お地蔵様が多い神秘的な島である。
 あいにくの雨の中、自転車を1台組み立てて、とりあえず近場の沢尻キャンプ場へ向かう。式根島のキャンプ場は観光協会に届けさえ出せばお金はいらない。砂浜が目前に広がり、景色がいい所で晴れたら快適そうなキャンプ場だ。釣り客もテントを張っている。湾の風が強くテントをはる場所に気を使う。
 山がちな地形の神津島は天上山がそびえる北部にはほとんど道がない。火山島なので急峻な地形はほとんどが地滑りをおこしてしまうようだ。島を一周することができないのでどこへ行くにもピストンするしかない。とりあえず港のある村まで戻り、観光スポットめぐりをする。
 にやけた顔の『えんま堂』(海岸の崖にある洞窟がお堂の代わりになっている)のお地蔵様(閻魔様?)を見てから、流人墓地、物忌奈命神社(いずれもたいしたことない )を通って、赤羽根峠、松山峠を越えて逆側の海岸に出る。島の峠は短いくせに急で、あっという間に下ってしまうので、玲子はすごく悲しがり、なかなか下ってこない。展望台までいやいや下り、いんちきくさい松山遊歩道を通って展望台まで出ると、青い海と霞掛かった海岸線が見えてそこそこきれいだった。
 また同じ道を登ってキャンプ場を越えて、温泉に向かう。錆崎温泉(露天)はすでに枯れていて、かわりに(有料だが)立派な温泉保養センターで大露天風呂(水着着用)やサウナを堪能する。いろんな種類のふろもあったけど、壊れているのも多かった。しかしここの食事(丼ものやチャーハン)がまずかった。 島の名物出してよね〜。
 テントに戻ったら風が凪いでいて、外で軽く飲酒。PM9時には寝る。


2日目:神津島−天上山登山  5/2(火) 20 km未満
 やっぱり雨の中、昼のパンを買って天上山への道を登りはじめる。今回のランで楽しみの1つである。黒島登山口に自転車を置いて、三号目までは海が見えていたが、それからはずっと霧の中。風が強く、ハイ松やシダ、ツバキの花がたくさん。山火事の跡もある。山頂は富士山のお鉢回りに似ていて、砂漠地帯や池が幾つもある。伊豆諸島や富士山が見えるという『新東京百景』なんて、全く霧の中。本当に晴れてほしかった。
 また見にこようと誓って、下山。長浜展望台から美しい海岸や、カメ岩(かめにそっくり)もみえる。切り立った岩場に、救命具の丸い浮きがところどころに備えてある。 よく人が落ちるんだろうか。
 夕食は村の居酒屋で大きな飛び魚の島蒸し(ピリっと辛い味付け)や、かじきまぐろのモツ煮、イカ刺etcですっかり満足。テントに泊まるだけで、まだエッセンをしていない。


3日目:式根島  5/3(水) 20 km未満
 曇り空の中、スパゲッティをゆでて、テントを畳み、神津島郷土資料館の開館を待ってゆっくり見てまわる。島の生活や流人の生活がよく分かって興味深い。
 AM10:40発の東海汽船で式根島へ。ここは周囲12kmの小さく平坦な島。海岸線が複雑でダイバー、釣り客に人気がある。そして楽しみにしていた温泉が2つもある。
 初めて太陽も出てくれてやっと常春の島に来た気分。海の色もきれいになった。今の時期はキャンプは大浦キャンプ場しか許されていないというので、そこに向かうが既に人ぎっしりでテント張る場所が無い。斜面にまで斜めにテントが立っている。やっと見つけた木陰はカラスが止まる木でカアカアうるさく、じめじめしてゲジゲジや尺取虫がうようよいて不快。早く出たい。このキャンプ場は長髪&茶髪のダイバー風の若者や外人さんが多い。
 とりあえず温泉セットを持って走り出す。高森灯台(高齢のおばあさんが船の安全の為に毎日階段を登って燈をともし続けた)で昼ごはんのパンを食べてから小さな島中を走り回る。神引山展望台から見た海岸線がきれいだった。(島のパンフレットにもなっている風景で、海の向こうには新島が見える)
 『足付温泉』は岩で囲った海中温泉。ぬるかった。(時間によっては熱い)みんな水着で入浴している。直ぐ後ろは海で、景色はいい。その隣にやけに茶色い温泉があり、そちらは丁度いい湯加減。
 水着の上からTシャツを来て次の温泉『地なた温泉』を目指す。谷底から強い風が吹き抜ける階段をずっと降りていくと、茶色の色の温泉がいくつかの壷に分かれて沸いている。丁度いい湯の壷に入ると極楽。しかし海中温泉は岩がぬるぬるで温泉の固形物が浮いていてちょっと不気味である。しっかり暖まったあと着替えてテン場に戻る。
 今日は初めて夕エッセンを行う。メニューは焼き肉(味付き肉、ピーマン、もやし)。今回は火器がPEAK1しかないし、コッヘルは健康を気遣ってステンレス製のコッヘルに変えてみたものの、サイズが小さく米を炊いたら汁ものが作れない位で苦労した。2人ともまともにエッセンするつもりが無かったってことか。


4日目:新島  5/4(木) 35 km未満
 早起きして新島行きの高速連絡船(AM8:30発)に乗る。小さい船だが ”22ノット”と自慢げに放送していただけあって10分でついてしまう(大型船だと20分かかる)。
 新島は南北に縦長い周囲28kmの島で、2つの山をくっつけたように真ん中だけが平ら。砂浜が多いのでサーフィンが盛ん。抗火石という水に浮いて加工が簡単な石が名産で、壁から屋根まで全て抗火石のブロックで出来たたてものや、モヤイ像(イースター島のモアイに似ている)が多い。
 今日は日差しがぎらぎら照りつけて式根島も見えて快適なサイクリング日和。玲子も初めてTシャツとレーパンになる。
 先ずは和田浜キャンプ場へ。ここは海が直前にせまり砂浜の上の高台に在り実に爽やか。昨日とは大違い。今回のランでは最高のキャンプ場だ。
 新島郷土館は流人の資料が多く、島の暮らしがわかりやすくまとめられていた。近くには流人の処刑所やお墓も在る。
 サイクリング道路を通って羽伏浦海岸まで出ると白浜にサーファーがものすごくたくさんいて、次の日は大会が行われるようだ。
 まずは北上してどんずまりの若郷まで行く。ここだけ黒砂の海岸だった。また同じ山を登って下って南に向かう。向山林道は勾配がきつく、向山巡見歩道を歩いたら戦時中の小型要塞(トーチカ)が在り、式根島・早島がみはらせて予想外に美しくて感動した。
 最南端には新島灯台があるが、その前に自衛隊のミサイル射撃場があって入れない。戻る途中に抗火石採掘場(大きな石切り用の円盤状のこぎりがあった)があり、その中に石山展望台がある。ここではパンフレット通りの「モヤイちゃんとその背後に大きく式根島」が見えて一番いい景色だった。満足して下り、ガラス工芸館を見学してから「浜の湯露天風呂」へ。
 ここは古代ギリシャ風の抗火石で出来た荘厳な雰囲気のあずまやが高台に出来ている。あずまやの湯かげんはぬる過ぎだが、その下の岩風呂の温泉は湯もきれいだし、いい湯で若者たちがごったがえしていた。
 「島寿司」を食べさせてくれるすしやで夕食をするも、謙二は足らずにテントに戻ってカップやきそばや串かつを食べてぐっすり寝てしまった。
 パンフレットを見直すと石山展望のモヤイちゃんの後ろには神津島もくっきり見えていてショックだった。今日は500UPくらいして距離もそこそこで結構充実した走りとなる。しかし夜になると雨が降ってきてちょっと残念。


5日目:伊豆大島  5/5(金) 30 km
 明け方にかけてけっこう雨が降り続いたがシュラフカバーに入って寝たので快適。近くの外人さんのテントは浸水して潰れかかっていた。やっと雨が朝になってやみ、空が明るくなってきたのでインラーとパンの朝エッセンにする。(今回はエッセンが邪道すぎる)気が付くと港の向こうに神津島らしい影がくっきり。初めて神津が見えて昨日の石山展望台に登ってみたい気分になる。
 テントを畳んでパッキングし終わり昨日より重い荷物で200mUPし、昨日のモヤイちゃんまで辿りつくと、神津島が天上山までくっきり見えていて嬉しくなった。 あとは一気に下って12:10発のフェリーに乗る。
 デッキで焼きそばやお菓子をばりばり食べて、利島を通り過ぎるのを見て、はるかに三宅島も見えた。海の風が心地良い。
 利島は山がまん中にある三角形の周囲8kmの小さな島でほとんど釣り客しか来ないという伊豆七島でも一番マイナーな島らしい。また今度立ち寄ることにしよう。
 大島にはPM2時過ぎに着いてホテル椿園の経営する椿園キャンプ場へ。唯一有料(一人一泊500円)だったが水場も汚く、さびれていてがっかり。元町(港)に近いだけが取り柄か。芝生の上にテントをはる。
 大島は伊豆七島の中で一番大きく、周囲50kmあり、中央に活火山の三原山がそびえ、溶岩流が海岸線まで達している。東京から近いだけあって一番観光地化されており、道路も太いし店もたくさん、人や車も多く、俗世間に戻ってきた気がする。
 はじめに行った『火山博物館』は世界各地の火山の写真,資料が集められていて圧巻だったが、音響のうるさい有料映画や子供だましの(有料)火山体験カプセルに入っていたらすぐ閉館時間になってしまった。
 サンセットパームラインと名付けられた道(名前通りの「ヤシの木が両側に生えている西側にある道路」を走って、牧場のミルクを飲みに『ミルクセンター』まで行くも既に閉まっていて自販機の牛乳も売り切れていて残念だった。さらに大島灯台まで行って再びサンセットパームラインを戻って露天風呂を目指す。せっかくサンセットパームラインで夕日が沈むのを見るつもりだったけど、サンセットには間に合わなかった。
 大島は火山島というのに最近まで温泉が出なかったらしく、村起こし事業で掘ってやっと出たらしい。この『浜の湯露天風呂』はPM7:00には閉まってしまうので、ふろ屋のおばさんにせきたてられる様にして急いで入る。やっぱり水着を着て、夕焼け空を見ながらしばし幸せな気分にひたる。
 風呂から出たらほとんどの店が閉まっていて、やっとわずかながらも食料を買出しして夕エッセンを作る。内容は、米炊いてインスタントみそしる、赤ウインナー、コロッケ、冷やっこといった少し悲しいものとなる。


6日目:伊豆大島−三原山、大島一周  5/6(土) 60 km
 天気も快晴で二人ともレーパン、サングラスをして快適に走り出す。今日の予定は三原山観光と大島一周。
 まずは三原山への御神火スカイラインを黙々と登る。三原山までは車は少なく、ぐんぐんと高度を稼ぐ。山頂口(外輪山の外側)まで車道が続いていて、後は歩きで三原山の火口原を回ることになる。昭和61年の大噴火で割れ目噴火がおこり、火口までは立ち入り禁止でいくことができない。しかし新たな溶岩流が多量にあり、迫力があった。途中に浅い水たまりがあり、おたまじゃくしがすごくいっぱい泳いでいて、今日みたいな天気ならあっいう問に干からびてしまいそう。さらにその上を馬がばしゃばしゃ通っていって、彼らの悲惨な運命を哀れに思った。
 イカの丸焼きやアシタバアイス(アシタバ:伊豆七島の名産。ほうれんそうよりも栄養価が高い香り豊かな緑黄色野菜)を食べつつ2時間くらいかけてゆっくり見回る。山頂の駐車場からは富士山や伊豆半島がぼんやり見えた。
 下りの途中、割れ目噴火で寸断された旧車道に遊歩道ができていて、噴火口を見てまわることができた。元町に溶岩流が数百メートルに迫っている様子もわかる。
 三原山から西側の『リス村』に下って、リスにえさをやるつもりだったけど、『リス村』はレジャー遊園地化されていて(時間もかかりそうで)入るのをやめた。
 後はひたすら大島一周道路を「大島一周する義務感」にかられて右回りに走る。海岸線まで下り、椿トンネル(今の時期はただの緑のトンネル)をくぐって途中の大島公園で、念願の大島牛乳(紙パック、¥100)をぐびぐび飲んで昼食にする。
 大島の東側は、等高線の高い所に道路が通っていて、再び400m登るのがすごく苦しかった。東側(デザートハイライン)は三原山の裏砂漠と呼ばれていて、火山灰と黒砂(風化してさらさらになった溶岩)が幻想的だった。サーキットのなかった頃はオートバイや車のレースをやっていたそうだが、MTBのクロスカントリーレースをやると面白そうだ。
 やっとつらい登りも終わって、筆島(筆先に似ている島)の見えるところまで下ったときにはホッとした。
 あとは割合平たんな海岸線を走って(車が多い)、地層の大断層がむき出しの壁(大島がすごい地殻変動を繰り返してきた様子がわかる)の脇を通り、やっと温泉まで帰りつく。昨日よりもゆっくり湯につかり、真っ赤な夕焼けの中に富士山や伊豆半島の連峰がうかびあがるのを見て、充実した気分になる。
 キャンプ場では最後のエッセンをして、コンソメスープ(ネギ、しめじ、豚)とスパゲティナポリタンをがつがつ食べる。
 今日はこのGWで一番走った日で1000mはUPした。
 うとうとして12時前に歯磨きに外に出ると、星がたくさん見えた。


7日目:伊豆大島発  5/7(日) 10 km
 快晴。テントをしっかり干してからパッキングして観光に出かける。
 『ぱれ・らめーる』という貝の博物館でいろんな貝を見て、『郷土資料館』へ。
 PM2:40発のフェリーに乗るために港で輪行していると、最近ドラマで活躍中の高橋克典がロケしていて、玲子は大喜び。撮影中は売店のおばちゃんまで野次馬と化している。しかし一緒にいた原田芳雄には誰も気がつかない。渋すぎると地味に見えるのだろうか。
 GWも終わりとあってフェリーはかなりの混雑。2等席(座敷)を確保するために並んで、なんとか二人寝転ぶスペースを取れた。
 船の中ではごろごろ、隣にすわった自転車好きのおじさんが「アルプスの自転車だねえ。二人でこれていいねえ。」とか話しかけにきた。
 東京竹芝桟橋にPM9時ころついて、GWランはあっという間に終わった。


<おわりに>
 今回の趣旨は「キャンプをしたい。温泉にはいりたい。変わったところにいきたい。」ということでほぼみたされた気がする。「走り」という点では楽な気がしたけどたまにはこんなのもいい。島ではみんなのんびりしていて、急いで走り回るという気分ではなかったから。
 さて次はどこにいこうか。