ワイン畑が美しいモーゼル川サイクリングロード


Mosel Radweg

written by 三村おおまち at 6/21/2004

 
 4月から6月にかけてドイツは一番いい季節です。それに合わせたかのようにこの時期は祝祭日も多く、結婚二周年記念ということで先週、夫と二 人でモーゼル川サイクリングロードのドイツ区間を走ってきました。

mosel       Marx


1日目(走行距離18キロ):


 
申し込んだのが遅くて自転車置き場の予約が必要な急行列車はもう取れませんでしたが、予約の要らない快速列車の方が却って 眺めがいいことが多いのはうれしいです。ヴュルツブルグを出て列車はマイン川沿いに走ります。途中で夫は野原を駆け抜けて行く大きな野ウサギを見たと喜ん でいました。そしてフランクフルトで乗り換え、今度は古城やワイン酒場が立ち並ぶ賑やかなライン川沿いの眺めを楽しみました。最後にコブレンツで乗り換え モーゼル川に入ると急に緑が増して落ち着いた景色に変わりました。作ってきたサンドイッチや果物でお昼ご飯にしました。サイクリング用に自転車を持ち込ん でくる人も多く、車内の自転車置き場もかなり込み合っています。

 お昼過ぎに古都トリアーの駅に着くと、自転車がさらに多いのに驚きました。モーゼル 川はかなり人気のサイクリングコースのようです。ところが街中に入った早々、突風が吹き、大雨が来そうな気配なのでカフェに入り、雨宿りでビールを1杯。 雨はまもなく通り過ぎ、陽が出てきました。そして現在も野外オペラなどに活用されているローマ時代の円形劇場や中国語の表示があるマルクスの生家などを見 物します。夫が妙なことに気づいたのですが、マルクスのレリーフのちょうど鼻の下に蜘蛛の巣がかかっていたのはなんともくすぐったい感じでした。

 それからいよいよモーゼル川沿いの自転車専用道に入り、下流に向かいます。殆ど舗装 され、平らで走りやすい道です。今日は雨がぱらぱら降ったかと思うと、またすぐ太陽が顔を出す、変わりやすいお天気です。そのうち突然大雨になり、慌てて 村に走り込み民家の軒下を借りて雨宿り。中年のドイツ人のカップルも慌てて自転車で駆け込んできます。のんびりしている夫が最後に到着すると軒下は一杯に なりました。と同時に、雨に混じって2―3センチもの大きさの雹がごんごんと音をたてて降ってきました。最初は4人で面白がって眺めていましたが、雨足も 一層強くなり、狭い軒下ではだんだん濡れてきます。すぐ前の道路の下水も氾濫し始め臭ってきました。向かいの家では浸水防止の板を家の入り口に急いで備え 付けています。気の毒に、毎度のことなのでしょう。10分ほど後には小降りになり、溢れた下水の中を走り抜けて行く自転車のグループも出てきたので、私た ちも転倒しないように気をつけながら再出発。

 宿探しをする頃にはまた晴れて来ました。モーゼル川に面した宿はもう全室ふさがって いましたが、別の改装したてのきれいな宿がまだ空いていてよかったでした。シャワーとトイレ付きのツインルームが朝食込みで65ユーロです。自転車もおじ さんが車庫にしまってくれました。夕食は近くのピッツァテリアに行きました。店内でピザの皮を作るところを見せているようなお店はドイツでは珍しく、小さ な子供たちが面白そうに見ています。パスタの味も悪くなく、満腹になりました。表に出るとまた小雨。この時期は晴れていれば夜10時頃まで明るいのです が、ホテルに戻って隣りの歯科医院のきれいな庭を眺めながら持参した1リットルのフランケンワインを空けて、明日に備えて早目に就寝しました。

2日目(走行距離78キロ):

 宿の朝食開始時間の8時より5分遅れて食堂に行くと、もう半分以上のテーブルは埋 まっていました。ドイツ人は早起きです。黒パン、白パン、ハム、ソーセージ、チーズ、半熟のゆで卵、フルーツヨーグルト、果物、そしてコーヒーにジュース とドイツの朝食はボリュームたっぷりですが、私たちもしっかりと取ります。夫の自転車のペダルのねじがゆるんできていたので、宿の向かいの自転車屋さんで 締めてもらいました。2ユーロです。近くのスーパーマーケットでミネラルウォーター2本とワイン1本の買出しも済ませて、出発。

 見渡す限り広がるぶどう畑が様々な緑色で美しく、走れども走れども続いています。ぶ どうの実はまだ1−2ミリといった可愛いものですが、1本の木にもう沢山の小さな房をつけています。モーゼル川流域は紅葉の頃が最も込みあうようですが、 秋の日差しに映えて輝く赤茶色の葉と緑色に熟した房はさぞかし美しいことでしょう。ただかなり急な斜面も多く、農作業の苦労が思いやられました。さらに下 流の地域では摘みとったぶどうを入れる籠や人を載せた椅子を丘の上まで運ぶ、電動式の昇降機を設置している畑もありました。

 通り過ぎる村々では必ずといっていいほど、美味しそうなモーゼルワインの醸造所が何 軒か眼に入ってきます。朝から飲んでしまっては後半輪行する羽目になりそうなので我慢のしどころです。ようやく1時をまわって、川に面したテラスがあるワ イン酒場でお昼の休憩を取ることにしました。自転車も沢山止まっていますし、混んでいるお店に概ね間違いはありません。入ってゆくと席についていた先客た ちが一斉に私たちを見ます。東洋人が、殊にサイクリングを楽しんでいるのが珍しいのか、いつものことながら煩わしい視線ですが、なるべく気にしないように しています。ドイツの典型的な豚肉料理は煮込み過ぎでしたが、ワインは絶品です。異常に暑かった昨年の、ワイン史上に残ると言われているワインももう結構 出回っています。このお店は100ccのグラスワインでアウスレーゼでも1ユーロ50セントほどです。試しやすい量ですが、まだ午後もあるので飲みすぎに 注意。

Weinberg       Bernkastel

 午後は木組みの家などがきれいな街を見物。また夕方5時頃には宿探しを始めました。 ドイツでは遅くても夕方 6時には宿に到着しているのが一般的なので、その前には見つけておかないとだんだん難しくなります。ツーリスト・インフォメーションで教わった宿に行って みると川側の空室はもうなかったので、その近くの割烹旅館にしました。シャワー・トイレに眺めのいいベランダが付いていて、ツインは朝食込みで70ユーロ です。自転車はレストランの奥の倉庫にしまってくれました。ドイツの宿にしては掃除がお粗末でしたが、それでまだ川べりの部屋に空きがあったのかもしれま せん。宿に着いてようやく、曇りがちな一日で油断していた間に結構な日焼けをしていたことに気づきました。

 夕食前の散歩がてらに川向こうの丘の上にあるお城の廃墟まで出かけたところ、途中からまた急に雨雲が押し寄 せてきました。自転車用の雨具も宿に置いてきてしまったので、慌てて登り切り、廃墟の脇にあった小さなレストランに駆け込みました。結局、雨宿りのついで に夕食もここで済ませました。常連のようなグループが騒々しかったのを除けば、鹿肉の煮込み料理の味なども悪くありませんでした。雨もあがり、宿に戻って ベランダでモーゼル川や先ほどの廃墟を眺めながら今朝調達したオースリーワインを1本空けて、早目に就寝。

 
3日目(走行距離60キ ロ):

Ana       Leo


 
今日もまた8時にしっかり朝食を取った後、近くで水とワインを仕入れて出発。渡し舟で対岸に渡してもらって、丘の上のお城 まで自転車で登ることにしました。モーゼル川の蛇行も見渡せる素晴らしい眺めだとガイドブックにはあります。期待して自転車を漕ぐうちにまた雨雲が出てき ました。てっぺんに辿り着いて一回り見渡して、早々に下ることにしました。また川沿いに走るうち、雷の音と共に後方から分厚い雨雲が追いかけて来るのに気 づきました。急いで次の村でレストランを探して駆け込みました。他のサイクリストやバイカーも一斉に押しかけて、小さなレストランはあっという間に満席に なりました。早目のお昼にして、小海老がのったジャガイモ料理を注文しましたが、まあまあの味でした。

 雨も通り過ぎて晴れ間が出てきたので出発したところ、しばらく走るとまた風が吹き始 め、今度は前方に異様に変形する不気味な黒雲が沸いてきているのが見えます。雷雲らしく、降られる前にと閉まっている中古車屋の広い屋根を見つけて雨宿 り。また15分ほどで雷雨も風もおさまり、出発。やがて空も明るくなり、ぶどう畑にそびえる廃墟が見事な小村などを眺めながら走っていくと、ようやくコッ ヒェム城に近づいてきました。ところが、また前方に雨雲が見えます。久しぶりに全力疾走で、コッヒェムの街まで2−3キロ走りました。お城が見える眺めの よさそうなカフェを急いで探して駆け込み、予定外のお茶休憩。お城も街並みも予想外にとてもきれいでしたが観光客が多いので、雨があがるとそのまま通過し て、その先の宿泊予定地で宿探しをすることにしました。

 車も自転車も乗り入れ禁止の自然保護地域のすぐ脇にある宿で聞いたところ1軒は満 室、もう1軒はおばあさんが経営する天井の高い広々した古い建物でここにしました。イギリスのB&B風で、とてもきれいに維持しています。シャ ワー・トイレ付きのツインルームが朝食込みでたった44ユーロです。泊まり客はもうひとり中年女性がいるだけで、とても静かです。ビールや水も共同の冷蔵 庫から勝手に飲み、自己申告制です。自転車は巨大な倉庫に入れてさせてもらいました。夕食は村のイタリア料理店にしましたが、ここが意外にもとても美味し くてうれしかったです。チーズをからめたパスタも七面鳥の煮込みもさっぱりしたいい味で、イタリアワインも満足できました。私たちが住むヴュルツブルグの 街には美味しい料理店がないのが残念です。ホテルで今夜はモーゼルワインを1本空けて、腰痛が悪化しそうなぎしぎし軋む古いベッドで就寝。


4日目(走行距離9キロ):

 今日こそ快晴かと思いきや、また怪しい空模様です。それでもオーナーのおばあさん曰く、今日は曇りで雨は降らない予報ですよ、と。それを信じ て今回の旅のクライマックス、エルツ城まで自転車で走ります。途中、階段があり、さっさと断念して自転車を置いて歩くことにしました。ぬかるみのハイキン グが30分以上続き、ようやくお城が見えてきた頃、今朝出会った若い3人組がマウンテンバイクに乗って元気に追い越して行きました。確かにあの最初の階段 さえ担げば自転車で走ってこられた道でした。皆一緒にお城のガイド付きのコースに参加しました。外装も内装も比較的落ち着いた、いいお城です。泥だらけに なりながら、また徒歩で下ると、私たちが自転車を置いてきた所には他の自転車だけでなく、ベビーカーも置いてありました。それでも車の乗り入れをさせたが らない頑ななドイツ人の城主になんとなく好感が持てました。

Burg_Eltz

 帰りの列車の時間まで、モーゼルケルン村のワイン酒場でちょっと奮発してリースリン グ、シュペートレーゼのモーゼルワインを1本、最後に楽しみました。帰路も車内は自転車ラッシュです。途中駅では車掌や運転手から自転車の乗車拒否に遭っ ている乗客たちもいましたが、すでに乗り込んでいるサイクリストたちが親切に通路を空けたりして自転車のスペースを作りだし、なんとか全ての自転車を乗せ ることができました。

 珍しく雷雨の多い旅でしたが、それでも雨にほとんど濡れることもなく済んで幸運でし た。電車賃は90ユーロ、二人で合計435ユーロ(6万円弱)の旅行代でした。お蔭さまで、またいい自転車旅行ができました。

 (2004年6月20日 記)