パラフィンコ−ティングによるチェ−ンの潤滑の勧め

by 浦野 浩司(投稿日:xx xx 1993)


 皆さんいつも自分の愛車をどこに置いていますか。まさか部屋の外で雨ざらしにしている人はいないと思います。床の間に飾っている、とはいわないまでも大抵の人は部屋の中やベランダに置いているのではないでしょうか。とすると走り終わったあとは泥を落として部屋の中に担ぎ入れることになりますが、その時うっかりチェ−ンに触って服を汚してしまったことはありませんか。また、輪行する時やパンク修理の時、あるいは何かの拍子でチェ−ンが外れてしまった時などチェ−ンの油で手を汚してしまった経験も一度や二度はあると思います。でもチェ−ンに油はつきもの、と当然のように考えていませんか。実は自分もそうでした。しかし世の中には面白いことを考える人がいるもので、ニュ−サイクリングの9月号に誤って触れても衣服や手が汚れないチェ−ンの潤滑方法が載ってました。読んでみるとそんなに難しくなさそうなのでさっそく試してみました。今回はその体験をレポ−トします。
 今回試した潤滑剤は固形のパラフィン(錠剤)です。パラフィンといってもピンと来ない人はろうそくのようなものだと考えてください。作業手順を簡単にまとめてみますと、
大体以上のような手順です。ではもう少し詳しく説明していきます。

1 チェ−ンの油分の除去
 チェ−ン切りで自転車からチェ−ンを取り外し、洗います。ニュ−サイではディグリ−ザ−を使っていましたが今回は灯油を使いました。200mlから300mlもあれば十分でしょう。適当な器に灯油をいれ、使いふるした歯ブラシでチェ−ンをよく洗います。砂やホコリが完全になくなるようにすると後の作業が楽になります。洗った後はよく灯油分を乾かします。チェ−ンのひとこまひとこまティッシュで油分を吸い取るようにすればよいでしょう。

2 溶けたパラフィンでの洗浄
 直径10cmぐらいでやや厚めの金属製の容器を用意します。例えば車のワックスの空き缶とか、海苔の缶の蓋などがよいと思います。容器にパラフィンを1−2cm敷きつめ、その上にチェ−ンを巻いて乗せます。さらにパラフィンを適量いれて準備完了。この容器より大きな鍋に水を張り、パラフィン入りの容器を入れて火に掛ける。鍋の水が沸騰してきたら火を弱めてパラフィンが完全に溶けるのを待つ。火が強すぎると沸騰した水がパラフィン容器に入ってしまいますので注意が必要です。パラフィンが溶けるとチェ−ンがパラフィンの中に沈んでいきます。完全に沈んだら割りばしなどでチェ−ンをかき混ぜ、パラフィンになじませる。ここで注意することはパラフィン、チェ−ンともかなり熱くなっているので手で触ったりしないことです。また沸騰した水蒸気でパラフィン容器が不安定になるのを防ぐために鍋の底から少し浮かせたほうがよいかもしれません。 チェ−ンの汚れが次第に溶けだしパラフィンが黒ずんできますが、1での灯油洗浄が十分だとパラフィンはそんなに汚れてきません。
3 チェ−ンの再洗浄
 2でパラフィンがそんなに汚れなければこの工程は省略してもいいかもしれません。やり方は2と同じです。新しいパラフィンを入れた別の容器にチェ−ンを入れ再度パラフィンの中に沈めてなじませます。完全に沈んでから5−6分もすれば十分でしょう。火を止めてペンチなどでパラフィン容器を取り出します。パラフィンが冷えて白くなり始めたらチェ−ンを取り出し、新聞紙の上などにチェ−ンを広げてさまします。チェ−ンを引き上げるタイミングが遅れるとパラフィンが固まり過ぎ、チェ−ンをほぐすのが大変になります。
2、3の工程を通じて水とパラフィンは、基本的に混ざることはありませんが、よほど気をつけないと鍋の中にパラフィンがこぼれ、鍋が料理用に使えなくなります。ご注意を。

4 チェ−ンホイ−ル、スプロケットの洗浄
 この工程はニュ−サイには書いてありませんでしたがチェ−ンホイ−ルヤスプロケットに油が残っていてはパラフィンで処理したチェ−ンが汚れてしまいますので、是非とも油分を取り除いておきたいものです。1で使用した灯油でチェ−ンホイ−ル、フリ−のスプロケット、リヤディレイラ−のガイドプ−リ−、テンションプ−リ−をきれいにしてやります。爪の間の窪みをひとつひとつ灯油をつけたティッシュなどで拭いてやります。ただし、フリ−内部やプ−リ−中心部に灯油が入るとグリスが流れてしまいますので注意が必要です。フリ−のスプロケットなどは分解して一枚、一枚きれいにしてやりたいですね。普段なかなか掃除しにくい部分ですからこの機会に思い切ってやってみてはいかがでしょうか。スプロケットはずしという専用工具が必要ですが、たしか西国分寺のG製作所にあったのではないかと思います。

5 チェ−ンの装着
 チェ−ンがさめ、フリ−などもきれいになったらいよいよチェ−ンを装着します。パラフィンが固まり、チェ−ンの動きが渋くなっていますので手でしごいたりして、滑らかにしてやります。この時、余分なパラフィンもある程度とれます。滑らかになったら通常通りにチェ−ンを装着します。

6、7 走行、拭き取り  チェ−ンが着いたら家の回りを変速しながら走ってみます。数百メ−トルも走れば余分なパラフィンは大体とれてしまいます。チェ−ンステ−、リム、フレ−ムにこびり付いたパラフィンをふき取って作業終了です。お疲れ様でした。

 チェ−ンのパラフィンコ−ティング、いかがでしたか。ニュ−サイの記事によれば変速時の応答性や、スム−ズさも油の場合と遜色ないとのことであり、私の印象も同様です。耐久性については雨にさえ当たらなければ1000km 以上とのことですが、私はそこまではまだ確認できていません。また、一度パラフィン処理したチェ−ンを油潤滑に戻したい時にどうやってパラフィンを除去すればいいのかが不明であることなどは問題点だと思いますが手で触っても汚れないチェ−ンというのは大きな魅力ではないでしょうか。
 今回は私がやった作業手順を簡単に紹介しましたが、これ以上に詳しいことはニュ−サイの記事を読むか直接浦野まで聞いてください。また、やってみたいけどパラフィンも工具も技術もない、という方、連絡もらえれば実地指導します。

追伸:その後60km位走りましたが、パラフィンのカスが少し出ている他は今のところ順調です。