日産ドライビングパーク参加レポート

by 浦野(投稿日:xx xx 1993)


 リンリンプロジェクトでは最近、移動手段として輪行の機会が多くなっていますが車を使うことも少なくありません。またサイクリング以外で車を運転する機会の多い人もいると思います。ここ数年、毎年一万人以上が交通事故で死亡していることを考えると車を運転するうえで一番大切なのが「安全運転」ではないかと思います。世の中、事故を起したくて起こす人はいませんし、またこちらに落ち度がなくても事故に巻き込まれるということもあるでしう(ねえ、Mさん)。車を運転していて、とっさの時に適切な行動(フルブレーキやハンドル操作)がとれればよいのですが人間なかなかそうはいかないのではないでしょうか。それならば普段からそういう練習をしておけばよいのですが、フルブレーキを掛ければタイヤが減るし、急ハンドルを切って車がコントロール不能になった時のことを考えると公道で練習するわけにもいきません。そこで、これらのいわば危険な状態を安全に体験できる機会が望まれます。ここ数年トヨタ、日産をはじめホンダ、マツダなどの自動車メーカー主催の安全運転教室が行なわれるようになりましたが、今回、7月25日に武蔵村山日産工場内のテストコースで行なわれた「日産ドライビングパーク」に参加する機会があったのでその体験をレポートします。
 この教室のコンセプトは「楽しく学ぶ安全」「危険な状態を安全に体験する」ということで、今回は36名の定員に対し約3倍の希望者があったそうだ。当日は朝8時に集合、諸注意の後ビデオやパネルを使って安全運転をするための心得や車の特性についての講義が約1時間あった。この辺りは免許更新時の講義とあまり変わらない。その後テストコースに出て準備体操、実車を使っての講習になる。今回、用意されていた車はブルーバードARX,ブルーバードsss,スカイライン、プリメーラ、セフィーロ、ローレル、シルビアの7台、いずれもオートマチック(AT)、アンチロックブレーキシステム(ABS)付であった。参加者の一人が運転席に座り、ドライビングポジションを合わせる。その状態で車の回りの死角についてパイロンを使って確認していく。その後参加者一人一人、自分のドライビングポジションの確認をする。シートに深く座る、ブレーキを踏んだ時に膝が伸び切らない、ステアリングを切った時に肘に余裕があるように、とこの辺は常識的なことばかり。ちょっと見落としやすいのはヘッドレストの調整だ。追突された時のムチウチ症を予防するためにもヘッドレストの調整は必要とのことだった。目と耳を結ぶ線がヘッドレストの中心に来るように調整すべし、とのことだった。
 一通りドライビングポジションの確認が終ったところでいよいよ実際に運転することになった。まずはウォームアップ走行。パイロンを使って作られた数百mのコースを一人2周する。スラロームあり、急カーブあり、急発進と急ブレーキあり、と忙しいコースだ。コース自体は難しくないが戸惑ったのがステアリングの切り方だった。朝の講習で習ったように270 度回す時はまずステアリングの上を持って90度回して、それから…、などと考えていると間に合わない。つい、日頃の癖が出てしまう。ウォームアップが終ったところで午前のカリキュラムは終了、お昼になる。
 午後からは3グループに別れてJターン、サークル走行、ブレーキングの講習になるがこの頃から激しい雨が降り出した。我々のグループはまずはJターンの講習から。パイロンで造ったカーブを40km/hと45km/hで進入した時の車の曲がり方についてまずはインストラクターがデモンストレーション。40km/hでは難なく曲がれたカーブが45km/hになると曲がりきれずパイロンをなぎ倒していく様子が示された。次いでゼッケン1番の人が同じように走行。しかし、45km/hでも曲がれてしまった。インストラクターの話ではステアリングを切り増しすれば曲がれることは曲がれるが、それは講習の主旨ではない、とのことだった。ごもっとも。いよいよ自分の番になった。実際にやってみると40km/hでのコーナー進入でもオーバースピードに感じるくらいのカーブだった。それでも何とか無事に通過。次に45km/hでの進入。スピード感は45km/hの時とそれほど変わらないが車は見事にコースアウト。5km/hの差が意外に大きいことに納得した。
 次に先程と同じRのコーナーに、カーブの内寄りと外寄りから進入した時の車の挙動についての講習に移る。内寄りと外寄りの差はタイヤ2本分、約40cmであり、共に40km/hで進入。外寄りから入った時は無事通過できたが内寄りから入った時はコースアウトしてしまい、コーナリングでのアウトインアウトの有効性を確認した。もっとも先程も書いたように実際には40km/hで進入すること自体無謀と思えるようなカーブではあるのだが…。
 このステージの最後としてインストラクター運転の車に同乗して、60km/hで同じカーブに進入する。このスピードだと明らかにオーバースピードで、ステアリング操作のよしあしに関係なく車はコースアウトしてしまうことを体験する。結局カーブの手前では充分に減速しましょう、というあまりにも当り前の結論となった。
 次のステージはサークル走行だ。半径12.5mの滑りやすい円形コース(いつもは水を撒くらしいがこの日はそんな必要のないくらいの雨であった)をFFのプリメーラとFRのスカイライインで30km/hで走行。ステアリング角度は固定したままで軽くアクセルを開けていく。プリメーラの時は円の外へ外れていくアンダーステアが出て納得。ちょっと驚いたのがスカイラインの時だ。同じように30km/hからアクセルを軽く吹かすとこれも円の外側に膨れていき、アクセルを戻すと円周に戻ってきたことだ。FFはアンダー、FRはオーバーステアでと思っていたのだが、車というものは本来すべて軽いアンダーステアが出るように設計されているとの説明で、FRでオーバーステアが出るのはアクセルを急に吹かした時だ、ということだった。それを確認するため、まずはプリメーラで先程と同じように30km/hでステアリングを固定した状態からアクセルを全開にする。車は強アンダーで円外に外れていく。次にスカイライン。30km/hからアクセル全開にすると後輪が円外に振られてスピンしてしまった。面白い。なるほどねえ、と納得してしまう。
 第3ステージはブレーキングの講習だ。フルロックブレーキ、ABSの有効性などを体験するのが目的である。まずはABSオフでの60km/hからのフルロックブレーキ。指定された地点で思いっきりブレーキを踏み込む。タイヤがロックして13〜16mで停止。面白い。タイヤが減るから自分の車ではとてもやる気がしないが人の車なら話は別だ。次にABSオフで60km/hからフルブレーキを掛け、かつステアリングで障害物を回避するという設定でタイヤロック状態でのステアリングの有効性を検討する。結果はというとタイヤロック状態ではいくらステアリングを切っても車の向きは変わらない、というものであった。このようなことは、知識としては知っていても実際に体験すると妙に納得してしまうものだ。
 次にいよいよABSを試す番になる。先程と同じく60km/hからの急制動、と同時に前方のパイロンをステアリングで回避するという設定だ。ステアリングを切るのが遅れるとパイロンに衝突してしまうのでタイミングがやや難しいが結果は辛うじてパイロンを避けることができ、ABSの有効性を改めて認識した。10万円強のオプションでABSが付くのだから今度車を買う時は絶対付けようと決心する。最後にインストラクターによる人間ABS(?)の同乗体験。60km/hからABSなしでフルブレーキ。直後にブレーキを離してステアリングで前方のパイロンを避ける、というとんでもない設定だ。しかしさすがはインストラクター、見事にクリアした。しかし彼いわく「最初からそうするつもりだからできるが、いざという時にうまくできるかはわからない。」とのことであった。ごもっとも。これで今日の講習は一通り終了。最後に朝のウォームアップ走行と同じコースを仕上の意味で2週し、5時過ぎに修了式となる。

 今回のスクール、1日コースで参加費は1万円(昼食付)。やや高いかな、とも思うが自分の車ではなかなかできないフルブレーキ、FRでのオーバーアクセル時のスピン体験、ABS体験などはやっておいて損はないと思う。日産では毎月、全国をまわってスクールを開いているとのことで、次回の東京での開催は11月14日です。冬には雪上ドライビングスクールもあるそうなので皆さんも一度参加してみてはいかがですか。なお、スクールの様子を写したビデオテープをもらってきましたので興味のある人は浦野まで。