JKT便り#01

by 花岡(投稿日:8 May 1996)


 帰国まであと2カ月をきり、折角のインドネシアを楽しまなくてはと、慌てて週末にバリ島の東どなりのLombok島に自転車を担いでやってきました。ガイドに島の北側の海岸添いの道路が交通量が少なく安全であること、涼しいうちに走りはじめたほうがいいことを助言され、日が昇った直後の早朝6時すぎに日本から持参したキャノンデールで走りはじめました。
 土曜の朝はのんびりしているのか、沿道のほとんどの人が「ハロ−」と人懐こい笑顔で声をかけてくれます。集落が途切れてもあちこちで道路の補修・改良工事をしており工事の人夫や、牛や山羊を引く子供達が声をかけてくてくれます。小さな子供は大声で「ハロ−」を連呼し、見えなくなっても手を振っています。行き交う車はほんとうにわずかで、産油国のためか路面のアスファルト舗装は一様おわっていて、始めは、緑に包まれた快適なサイクリングを楽しむことが出来ました。
 しかし、いきなり道路の縦断勾配を無視した走り応えのある、壁のような坂が次々に現れ始めました。バスなどはローでも登るのがきついくらいの坂道に、脚がすぐ引き攣ってきました。インドネシアに来てから、ほとんど自転車に乗ってないし、ましてやツーリングはほんとに久しぶりでした。坂道といえば、ジャカルタでは日曜日の歩行者天国で一番の幹線であるスデイルマン通りを時折走るとき、立体交差の比高差十メートルを登るくらいで、凄いLoadがいきなり2年間なっまていた足にかかりました。ブランクを省みず、コ−ス選定を誤ったことを後悔しました。沿道の声援は途切れず、辛くてもつい「PAGI!]と挨拶を返しながら走り続けてしまい、辞めるにやめられなくなりました。結局、ホテルのあるSEGIGIから30キロ北上したPAMENANGまで2時間ほどかけて走りました。
 インドネシアでのサイクリングは、現地調査におり垣間見る交通事情の危険性から諦めていました。交通量の少ない離島にやってきて借り上げタクシ−と併用して楽しむ方法があることを改めて知りました。もっと早く気がついていれば楽しめられたのにと、いたく後悔しています。
 自転車の速度は道端に人々と言葉を交わし、インドネシアの風景と匂いを楽しむには最適です。ただし、景色に見とれてはいられません。路面に注意していなければなりません。自動車にひかれたネズミの死骸(こちらのねずみは育ちがよくて、小猫くらい大きくなります。予談ですが反対に猫は育ちが悪くて小さいし肋骨が浮き出てがりがりのが多いです)が煎餅のようになって落ちています。また、ロンボックの主要な交通機関である馬車の落とし物が、かなりの密度で落ちています。
 最近開通した島の北東海岸ぞいの道は、舗装された幅が中央線センターラインを挟み大型車程度の幅しかなく、くねくねと折れ曲がっています。現況の地形を重視した線形といえます。道路の改良・補修工事を人力によるほとんど手作業にたよっているところをみると、重機を用いた規模の大きい土工工事を伴うような工事の予算ができなかったようです。その道は日本の自然を圧するような直線的で機能的な道路と比べ、いかにも野を越え山を越えという感じの道で、懐かしい気がしました。学生時代、駆けずり回った北海道の改良されていない地方道、特にを知床の海岸線の道を思い起こさせます。その分アップダウンがきつくて、強じんな脚力を必要としますので、気持とは裏腹に脚に確り応えてきます。